春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
この記事の写真をすべて見る

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「年賀状」。

【この記事のイラストはこちら】

*  *  *

 年賀状……私は毎年知り合いのデザイナーさんにイラストを描いて頂き、そこに自筆で宛名と一言二言書き添えて年明けに投函しています。今年はとりあえず150枚。去年までは200枚。数年前から、年賀状は「来たら返す」方式に変えたところ、案の定「来る」枚数がめっきり減りました。

 来て欲しくないわけではないのです。年賀状を頂くとたしかに嬉しい。でも返事はちょっと……いや、かなり億劫。もう年賀状のやりとりはやめちまおうか、とも思うのですが、急にシャットアウトするのも気が引ける。何度も言いますが、貰えりゃ嬉しい。

 家族写真や凝ったデザイン、送り主の近況に少しでも触れてる『前向き』な年賀状は返事のしがいがあるのです。私がモヤモヤするのは、簡単な挨拶と企業名、代表取締役○○と必要最低限のことのみ印刷された企業からの『ビジネス年賀状』。あれって、会社内の、どの部署の、どのくらいの位置の人が作成してるんでしょう? その会社のCEOが「プリントゴッコ」でガッチャンガッチャン刷ってるなら貰いがいもあるのです。豊田さんとか、孫さんとかがインクまみれになって何万枚もイモ版押してるなら欲しいけどね。……要りますかね、あれ。国会議員は文書費が税金から出るから羨ましい。こちとら自腹の個人営業。誠に申し訳ないですが『ビジ年賀』にはちょっと前から返事はしないことにしました。あ、週刊朝日編集部からも毎年頂きますが、こちらは担当者からの自筆メッセージが加わってるので返信しています。

 元旦は私あてに届いた年賀状と、返信用の年賀状と、筆記用具を持参して外出。早朝、師匠の家に挨拶。午前中からホテルで一席。寄席を3カ所掛け持ち……の合間に、空いてる喫茶店でシコシコと年賀状の返事書きをするのが毎年のルーティンです。

次のページ