■カメラの配置は「将棋の駒を動かす」感覚で
テレビ東京は小さな局なので、早ければディレクターには2年目ぐらいでなれます。最初はAD兼Dですが、歌番組だったら1曲だけ担当させよう、カット割りをさせてみようなど、早めにチャンスが訪れる。私も制作局の2年目にはチャンスをいただいて、「ディレクターと名乗れる!」と、鼻をふがふがさせていました。
ディレクターで初めて任されたのがカット割り。バンドの映像の場合、ギターの音がしているときはギターの映像を見たいし、ボーカルが歌い上げたときにはボーカルの顔を画面で見たい。事前に、ドラマのカット割りと同じように、画面内容を決めて割っていくんです。その台本をカメラ、技術、照明に渡すように作る。上WS→セLS(上手のウェストショットからセンタのルーズショットにぬけるカット)とか暗号みたいな文字で書いてあるのですが、最初、用語がわからなかったので絵に描いていましたね(笑い)。
右からも左からも正面からも……5台のカメラがぶつからないように配置を考えたりもします。クリエイティブな作業と見せかけて、「将棋の駒を動かす」みたいな感覚ですね。今、カメラがここにいるから、ここまで進めないというのを脳内でシミュレーションする。このカメラはクレーンだから、あまり移動ができないとか。
2年間、その仕事を任されていましたが得意じゃなかった。でも、教えてくれた先輩に、漫画家としてデビューしたので読んでくださいと本を渡したら、「漫画はカット割りできてんじゃん!」と言われましたけれど(笑い)。
■自分の描いたキャラクターが動き、声を出す喜び
漫画を描いた理由は、ADって変な作業が多いし、私はポンコツで仕事ができないし。そんな中で、この日々を記録しておこうと思ったんです。切れっぱしの紙にボールペンで、断片的な日記みたいなものを描いていた。それを先輩の佐久間宣行(元テレビ東京プロデューサー)さんが、インスタとツイッターに上げてくれ出版に繋がりました。