テレビ局の制作局は、夢の世界を考える人たちと、それを叶えるために奮闘しなきゃいけない人がいる。奮闘する立場がADなので、先輩の思い描いた世界を実現するために足を動かしましたね。
テレビ東京の番組の中でも「出没!アド街ック天国」は本当、取材をたくさん重ねて作っています。亀戸の取材にいくときには、「アド街の亀戸編を絶対に見て行けよ」と言われますね。そして、そこでもまだ拾われていない情報を探す。社内でもあの番組は、勉強になる「辞書」みたいな存在です。
■パリピ―のノリじゃなく、緻密な作業の積み上げが多い業界
皆さん、テレビ局の制作局で働く人ってもしかしたらパリピ―みたいな人が多いと思っていませんか? 私も最初、そうでした(笑い)。「いいじゃん、いいじゃん。楽しけりゃ、それでいいじゃん」みたいな。
でも全然違います。そんなノリでイケると思っている人ほどギャップを感じると思います。想像するよりも放送業界は、緻密な作業の積み上げが多いんです。生放送の尺の計算を間違えただけで、放送事故に直結する。台本も、出演者さんの名前に誤字脱字がないか確認する。PCって、勝手に変換をするでしょう!? だから、常に『日本タレント名鑑』を見ながら漢字が間違っていないかを確認する。
また、音楽業界には年次の並びがある。結果、「あいうえお順」にしたりとか。どんなに面白いことを考えついても、基本的なことができないと、その先にはいけないと思います。
■今でも夢に見る、生放送で歌えない人が出る恐怖
私が一番向いていなかった仕事は「尺計算」でした。土壇場でやっているような生放送でも、構成表があります。歌番組は、曲の分数が決まっているから、生放送中にトークをし過ぎて歌えない人が出てきたら大問題。だから会話はどのくらいか、目安を決めている台本のようなものがある。その分数計算が間違えていると、本番近くになって「3分足りない! 歌えない人がいる」となるんです。
実際に私、エクセルで計算をしたのですが、計算式がはちゃめちゃになっていて、前日に5分足りないことが発覚した。もう、「ぎゃあ!」と叫びましたね。皆「真船には計算をさせられない」と言って、今まで見た事もない偉い人たちが集まって、みんなで表計算をし始めて……。それを遠目で見ながら、「あっ、私のテレビ人生終わった」と思いました(笑い)。その表計算の失敗は今でも夢に見るし、「もう2度と計算しない」と心に決めた出来事でした。まあ、翌年から違う人が担当になりましたが。