人生100年時代。とはいえ、90歳という年齢で仕事を続けている人というのはそう多くは聞かない。「アラウンド90」の現役の一人である俳優、中村メイコさんに話を聞いた。
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「私は、ネアカなんですよ。年がら年中、明るい。だから思い悩むとか沈み込むとかいうことがないんです。よく子どもたちから『馬鹿なんじゃないの、お母さん』って言われるくらい」
開口一番そう言って、中村メイコさん(87)は大きな声で笑った。この明るさこそが、健康の秘訣だという。
「病は気からという古い言葉がありますとおり、精神的に落ち込むのが体を悪くするんじゃないでしょうか。私はストレスレスの女ですから。舞台で五寸釘を踏んじゃったり、骨折しちゃったりと大ケガをしたことはありますけど、体調はずっといいんです。お酒はちゃんと規則正しく飲んでますし(笑)、体にいいことなんて何もやっていないんですけどね」
ただし俳優の仕事をするうえで、食事の際に気をつけていることがひとつだけあるという。食べる量だ。これまでの人生で、一度も食べすぎた経験はないそうだ。
というのも、
「満腹になるまで食べると、動きもせりふ覚えも悪くなります。だからいつも腹六分目くらい。もうちょこっと食べたいけど、というくらいでやめるのが、役者としてやっていくのに一番いいみたいですね」
中村さんが芸能界で仕事を始めたのは、なんと2歳のときだった。
「映画出演を依頼されたとき、父は『喜劇になら貸します。悲劇にはうちの娘は貸しません』と条件をつけたそうです。小さいうちから『お母さん、行かないで』みたいな芝居をやって、自分は不幸なんだと思い込んではいけないからって。おかげでエノケンさん(榎本健一)やロッパさん(古川ロッパ)などスマートな喜劇をやる方とばっかりお仕事したんです。それがよかったんでしょう」
芸歴はなんと85年にもなるわけだが、この間、仕事への情熱が高まった時期もなければ下がった時期もなく、ずっと一定だったという。