エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【画像】特定政党から資金提供を受けていたネットメディアに対し発表した抗議文がこちら

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 すでに複数のメディアで詳細が報じられている通り、ネットメディア「Choose Life Project(CLP)」に対して、1月5日に出演者有志5人で抗議文を公開しました。ジャーナリストの津田大介さん、フォトジャーナリストの安田菜津紀さん、東京新聞の望月衣塑子記者、朝日新聞の南彰記者、そして私の5人です。市民のための公共メディアを標榜していたCLPは、2020年の一定期間、立憲民主党から約1500万円の資金提供を受けていたにもかかわらず、それを視聴者、出演者、クラウドファンディングやサポーター制度の支援者に知らせていませんでした。特定政党から資金提供を受けていた事実を隠して公共のメディアを謳(うた)うのは視聴者を欺(あざむ)くことになり、報道倫理に反しています。また立憲民主党も、不透明な形でネットメディアに資金提供を行った点で問題があります。人々はメディアを通じて事実を知り、ものを考えます。そこに政党が密かにお金を出せば、自党に有利になるように世論に影響を与えることもできます。立憲民主党は、今回の支出について「違法ではないが適切ではなかった」として再発防止策を講じると発表しました。CLPは、第三者委員会を設置して報告書を作成するとしています。どのような顔ぶれになるか注視しています。

ネットメディア「Choose Life Project」(CLP)に対し、1月5日、出演者有志5人が連名で抗議文を発表した(medium.comのスクリーンショットから)
ネットメディア「Choose Life Project」(CLP)に対し、1月5日、出演者有志5人が連名で抗議文を発表した(medium.comのスクリーンショットから)

 匿名ツイッターアカウントDappiへの自民党の関与疑惑では権力によるメディア利用の巧妙化が懸念されており、大阪府と読売新聞の包括連携ではジャーナリズムの権力監視機能が働かなくなるのではと問題視されています。記者クラブ制を基盤とする大手メディアと政権の馴れ合いもかねて指摘されています。こうした事例を党派争いで論じるのではなく、政治倫理と報道倫理の視点で考えることが重要です。メディアの独立性を高め、お金の流れを透明化するための仕組みづくりが必要です。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2022年1月24日号