大学生が性被害や性暴力に遭い、それが軽視されている。なぜ大学生が性被害に遭うのか、なくすにはどうすればいいか。多くの大学で今、学生が主体となった挑戦が始まっている。AERA2022年1月31日号の記事を紹介する。
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大学院生の時、レイプ被害に遭った。
「抵抗したら殺されるかもしれないと思ったので、抵抗できませんでした」
小川優(ゆう)さん(29)は振り返る。
当時、都内の私立大学に通っていた。性的同意など知る機会はなかった。ある日、カナダ人の男友だちから、部屋で一緒にご飯を食べないかと誘われ相手の部屋に行った。すると突然、体を触られ、首を絞められレイプされた。その間、ずっと「いや」と言ったが「日本人のいやはYesなんでしょ」と言われた。
レイプされたことは頭ではわかっても、受け入れることができなかった。親には心配させたくないので話すことができず、警察に届け出ようか迷ったが届けても証明できるものがないのであきらめた。以来、フラッシュバックに苦しめられる。男性を避け、ジェンダーに関する社会活動もできなくなり、挑戦したいキャリアの選択肢も狭まった。小川さんは言う。
「性的同意が何なのかが分かっていたら、こんなことは起きなかったと思います」
大学生の性被害や性暴力が深刻になっている。
■性的同意の理解不足
早稲田大学の学生で組織された「Voice Up Japan早稲田支部」と「シャベル:早稲田で性暴力の根を切る」が共同で活動する「性的同意プロジェクト」が2021年6月、インターネットを通じて行った「大学の性被害・目撃経験の実態を調べるアンケート」では、同大の学生・院生・教職員ら278人が回答、うち約半数の47%に当たる130人が性被害に遭っていたことがわかった。
「飲んだ後、無理やりホテルの前まで連れて行かれたりした」
「大学構内で道を尋ねられ、教えたら『お礼に』と笑いながらコンドームを渡された」
といった回答があった。