これが片づけ習慣化の成果。パソコンや書類などはワゴンにまとめました/After
これが片づけ習慣化の成果。パソコンや書類などはワゴンにまとめました/After

 状況が変わったのは昨年の夏。コロナ禍で、出張以外は家で仕事をする生活に切り替わったときです。

 シーンと静かなダイニングでパソコンを開き、ふと顔をあげると目の前はごちゃごちゃ。

「私は昨日と同じ今日を繰り返している。今日と同じ明日は絶対に嫌だ。そう思いました。でも、ここまで来ると何をどうしたらいいかわからなくて」

 忙しくなくなる日なんて絶対に来ない、何かしなければ……。そんな折に、家庭力アッププロジェクトに出会いました。

 彼女がハマッたのは、毎朝みんなで10分間だけ片づける「朝活」でした。睡眠時間を削って夜に片づけるより、時間制限のある朝の決まりごとは、1日を動かすスイッチになります。

「片づけ本も読んでいて『やればできる』と思っていたのですが、実際にやると進まなくて。行動の壁を越えるのに朝の10分は大きかったです。“一人じゃない感”にもあと押しされました」

 普段ならソファでお茶を飲んでいる時間に段ボールを1個でもあける。待っていてもやる気なんて起きないから、1ミリでも動く。すると次の行動へのハードルが低くなります。「やり方を知っているけどやっていない」のと「やっている」は次元が違います。小さな行動こそ、習慣化の第一段階なんです。

 階段を上がるように片づけは進んだけれど、見だけでフリーズしてしまう部屋の存在が最後まで残りました。夫の管理下の通称「ドラッグストア部屋」。いつの間にか物置になってしまった場所です。

「日用品を買ってきてくれるのはありがたいんですけど、買った物が段ボールやレジ袋に入ったままなので、また同じ物を買ったりして物が増えるばかりで」

 そこには、歯ブラシからリュックサックが壊れた時のストックまで保管され、不用品も混じっていました。でも、週末の買い物は夫の気分転換でもありました。夫を尊重してその部屋はあきらめ、穏便にやり過ごすほうがいいのかも。迷った末に、私やプロジェクトの同期に相談を持ちかけました。

「そのときに言われたのが、『他人の問題や家族の問題をみなさんが引き受ける必要はない』という言葉。少し光が見えました。自分と家族の問題を切り分けたら、できることが見えてきたんです」

次のページ
段ボール箱一つも勝手には捨てない