元東京都知事で作家の石原慎太郎氏が亡くなった。89歳だった。タカ派政治家として知られた石原氏。2015年7月、安保法制の衆院通過が目前に迫る中、石原氏と亀井静香氏が対談に臨んだ。自民党時代から盟友の2人だが、安保法制などについてガチンコの大激論となった。故人を偲んで、週刊朝日の記事を再掲する。
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亀井:今、日本がやるべきことは、自主防衛を強化すること。なのに、新しい安保法制が成立して中東での戦争に参加すると、自衛官が死ぬ。その覚悟が今の自衛隊にありますか?
石原:ないね。実は自衛隊の安全について深刻な盲点がある。日本一の救急病院である都立広尾病院の佐々木勝院長から聞いたんですよ。米国のベトナム戦争の映画だと、地雷を踏んで片足を失った兵士は、仲間の兵士が止血する。足をしばって、軍服の上からモルヒネを打つ。すると、2時間ぐらい痛みがない。その間にヘリで運んで手術をする。ところが、日本の自衛隊の一般隊員はモルヒネが一本も持てない。持とうとすると、厚労省が邪魔するので、自衛隊の衛生兵にはほとんど救急能力が備わっていないんだ。
亀井:慎太郎先生、そんな状態で中東に行かせるの?
石原:自衛隊は徴兵制度ではない。命を落とす可能性もあるのに、志願して兵隊になっている。死ぬ覚悟で行く。だからこそ、彼らの危険を考えない作戦をやってはいけない。
亀井:実際に死ぬんです。戦死しない戦闘ってあるんですか?
石原:今の自衛隊では、けがをしても助かる命も助からない。このことを教えてあげたある自民党議員が党内で発言しようとしたら、「先送りしてくれ」と言われたって。おかしな話ですよ。1978年に栗栖弘臣統合幕僚会議議長が交戦規定の必要性を話したら、文民統制に反すると批判され、当時の金丸信防衛庁長官がクビにした。以来、タブーになっている。交戦規定のない軍隊など、世界にありはしない。
亀井:慎太郎先生の話を聞いていると、安保法案は今国会で成立させるのは、やはりダメだ。再確認した。
石原:僕は自衛隊を愛しているからね。交戦規定もちゃんと作るべきだ。