田原:いや、受け取ったんですよ。そのときにもし断ったら、田中角栄さんとケンカになりますよね。彼は自民党のドンだから、自民党の取材ができなくなる。どうしようかと思ったけど、その場では受け取って、すぐ田中さんの麹町の事務所に行って、早坂茂三さんという秘書に「お金は必要なところにあるべきで、僕は必要じゃないから返します」と言って返したんです。このときから早坂さんと仲良くなりました。

林:「朝生」も「サンデープロジェクト」も、「僕は司会をやってるんじゃない。ディレクターとして指示を出してるんだ」とおっしゃってますね。*

田原:司会をやってるつもりはないです。だからまとめようとは思ってない。たとえば日本の安全保障なんて、たった3時間で結論が出るわけがない。僕の仕事は、出た人にホンネを言ってもらうこと。政治家はホンネを言うのがあまり好きじゃなくて、タテマエでごまかそうとする。そうなったときに「それは違うでしょう!」ってやるわけね。

林:そのわりには、政治家は田原さんと仲がいいですよね。

田原:それはね、僕はウソをつかないから。それと、僕は政治家のお金の問題は追及しますけど、女性問題は一切追及しません。だって、できるわけないじゃない。自分に問題があるんだから。

(構成 本誌・直木詩帆)

週刊朝日  2022年2月18日号