帰宅して妻にこのことを話すと、相手の男性が大柄だったこともあり、「ドッペルゲンガーじゃん」と完全にズレまくったことを言っていたが、よく思い出すと、俺はそのとき黒のジャージにカーキ色のダウンジャケットだったのだが、相手の男性も上下ほぼ同じ色で、つまり歩道橋の上で、大柄なペアルックの男性2人が、右、やばい左、いかんいかん右、と延々79回(注・佐藤二朗の体感)繰り返していたのかと思うと、なんだか可笑しくなり、なんだか哀しくなった。
皆さん。これから僕とすれ違う皆さん。向こうから佐藤二朗がやって来たなと思ったら、どうか、どうか僕とは逆に寄ってください。
恐らく、その逆に僕も寄るでしょう。
■佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。