サブプライム危機のような事態も危惧されるが、日銀の黒田総裁は10日、毎日新聞のインタビューに「消費者物価が大きく上昇する可能性は極めて低い」とし、「日本は欧米より景気回復のテンポが遅く(中略)金融緩和の縮小や引き締めに切り替える必要はない」と話している。
そして、「年金額の減少」も悲観される理由の一つだ。週刊文春2月10日号で、経済ジャーナリストの荻原博子氏が「2022年度から、公的年金の支給額は前年度比マイナス0.4%に減額されます。つまり、あらゆるモノの値段が上がっているにもかかわらず、年金額は減るという最悪の事態が起きるのです」と語っている。
減額は22年6月の受け取り分から適用されるが、夫婦2人のモデル世帯への支給額は、月額21万9593円。前年度比で月額903円の減額だ。
荻原氏は続けて、「日銀が1月18日に発表した22年度の消費者物価指数の上昇率の見通しは前年度比1.1%です。総務省の家計調査報告を元にすれば、夫婦2人世帯の消費支出は月額で2468円増える計算になる。これに903円の“収入減”を合わせれば家計の負担増は月額約3400円。年額にすれば4万円を超えます」とも語っている。
生活苦にもなりかねないという国民の声を岸田首相はどう聞くのか。そして、いかにすればこうした事態を回避できるのだろうか。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年2月25日号