ジャーナリストの田原総一朗氏は、岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」にマスメディアが悲観的な見方を示す理由を解説する。
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岸田文雄首相は、内閣の目玉政策として「新しい資本主義」なるものを打ち出している。
新しい資本主義によって経済を成長させ、国民に利益を分配するというが、日本はこの30年間、まったく経済が成長していない。
2012年に、第2次安倍晋三政権が発足すると、安倍首相は日銀の黒田東彦総裁と組んで、「異次元の金融緩和を実施する」と宣言した。つまり、思い切って貨幣を発行する、ということだ。そして、やはり思い切った財政出動をする。それによって内需を拡大させ、経済を成長させる、というのである。
それまで日本経済はほとんど成長していなかったため、多くの国民が、この思い切った政策に期待したのだが、残念ながら成果は上がらなかった。内需拡大も、経済成長もしなかったのである。
そのような日本経済を、岸田内閣は一体どうやって成長させるつもりなのか。
私は、岸田首相が強調する新しい資本主義に期待しているのだが、少なからぬマスメディアは、残念ながら岸田首相の新しい資本主義に悲観的な見方を示している。
悲観する一つ目の理由は、生活必需品の値上がりだ。たとえば、昨年12月の米国の消費者物価指数は前年同月比7%増と、39年ぶりの高い伸び率を記録し、さらに原油先物価格が7年ぶりに高値となり、日本でも原油の高騰に引っ張られて諸物価が上昇している。
さらに1月26日には、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを明言した。多くのエコノミストが、このことによって、日本も米国に歩調を合わせて利上げに踏み切る可能性が高い、と予測している。もしも住宅ローン金利の上昇などが起きれば、買い控えが進んで、ますます日本経済を大きく冷え込ませる、と見られているのである。