短期集中連載「起業は巡る」。第3シーズンに登場するのは、新たな技術で日本の改革を目指す若者たち。第2回は、膨大なニュースや社内データの中から興味・関心に合うものをAIが選び出して配信する「ストックマーク」社長の林達氏だ。AERA 2022年2月28日号の記事の2回目。
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すでにニュース・キュレーション(収集)サイトと呼ばれる「グノシー」や「スマートニュース」は世に出ていた。だが芸能やスポーツ、事件など収集範囲が広く、ビジネスに特化したものではなかった。海外のビジネスニュースもほとんど入っていない。ビジネスパーソンには「自分の業種、業界の国内外のニュースを詳しく知りたい」というニーズがあるはずだ。
さらにそこにAIの特性を加える。同じ業種でも、営業と財務では微妙に必要とするニュースが違う。AIは利用者が今まで読んできた記事のバランスから選択順位に重みをつけ、嗜好(しこう)にあったニュースを探し出す。
「これは絶対にうまくいく」
有馬がベータ版を完成させたのが14年のクリスマス。林はノートPCを抱え、自信満々でベンチャー投資家を訪れた。しかし、どこも反応は冷たかった。
最初にストックマークに可能性を見いだしたのは投資家ではなかった。渋谷のアップルストアの上にあるコワーキングスペース「TECH LAB PAAK(テック・ラボ・パーク)」。リクルートが運営していた会員制オフィスで、スタートアップ支援の一環として事業が審査に通ると、オフィスやサーバーを無料で使うことができた。
審査員のおじさんは、ウェブサイトをブックマークしまくって情報の海に溺れていた。そんな彼が「これいいねえ」とサービスを気に入ってくれた。有馬にとって第三者に認められたことが何よりうれしかった。有馬も会社を辞め、ストックマークに専念すると決めた。