林達(はやし・たつ)/1986年生まれ、東京都出身。35歳(撮影/写真部・松永卓也)
林達(はやし・たつ)/1986年生まれ、東京都出身。35歳(撮影/写真部・松永卓也)

 アップルのアップストアでアプリを売るようになり、地道にユーザーを増やしていたある日。突然、複数の企業から問い合わせが殺到した。ウェブ雑誌の「週刊アスキー」にサービスを紹介する記事が出たのだ。

 サーバーがパンクしそうになり、有馬は友人に助けを求めた。

みな難問に飢えている

 有名企業でエンジニアとして働いていた彼は、3日間、有給休暇を取って応援に駆けつけた。

「友達だからというのもありますが、何か面白そうなことが起きてるから、参加しない手はない、という感覚だったと思います」と有馬は振り返る。このピンチを乗り切ると、友人は「面白い経験をさせてくれてありがとう」と言って帰っていった。

 ネットの世界のカルチャーを有馬はこう説明する。

「みんな難しい問題に飢えてるんですよ。これはちょっと無理という状況が生まれると、必ず『俺ならできる』という人が現れる。難題を解決すると、その人はヒーローになるんです」

 幼少期からインターネットに触れる「デジタル・ネイティブ世代」が社会人になり始めた。彼らは林が言うところの認知バイアスが低い。米メジャーリーグで二刀流を貫く大谷翔平や、スノーボードとスケートボードを掛け持ちし、北京五輪で金メダルを取った平野歩夢。羽生結弦も前人未到の4回転半に挑んだ。彼らは不可能に挑み、楽しそうに壁を乗り越えていく。

 ストックマークは社内データの検索サービスも開発。利用企業は計1500社を超す。自前のデータセンターが必要な規模だが、今はパブリッククラウドがある。有馬は感慨深げに言う。

「パソコンの画面でサーバーの数を500と入力するだけで、ネットの向こう側にある500台のサーバーが一斉にブンッと立ち上がる。しかも1カ月とか1日とかではなく1時間単位で利用できる。なんていい時代なんだろう、と思いますよ」

高い山に登った先は

 21年3月、ストックマークは投資ファンドのWiL、Bonds Investment Groupなどを引受先とする第三者割当増資で新たに10億円超を調達した。WiLの担当者は「自然言語処理×大企業DX×SaaS(必要な機能を必要な分だけ利用できるソフトウェアサービス)の三つが交差した市場」と表現。「ホワイトカラーの生産性向上」が叫ばれる今の日本に、ドンピシャのサービスというわけだ。

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