「できるかどうかと考えていたら、きっと、できないという結論になった。ユーザーには何が必要かと考えた時、それを実現するためのシステムの難度は飛躍的に上がりました。一方、その難度に惹(ひ)かれるように、有馬をはじめとする優秀なエンジニアが集まった。高い山を目指したからこそ、人が集まったんだと思います」と林が振り返る。
高い山とはどんなものか。有馬が言う。「AIはアルゴリズムだけじゃ動かない。人間が色々教えてやらなきゃいけないんです。とても泥臭い作業ですが、いとわずにやると、人の力とアルゴリズムが組み合わさった、とても美しい世界が見えてくる」
ネット上には世界中の記者が毎日、書き続けている莫大(ばくだい)な数のビジネスニュースと、ホワイトカラーが徹夜で書き上げた膨大な数の資料がストックされている。その情報の洪水からAIが有意なデータを探し出し、我々の前に差し出してくれたら。情報に溺れる我々の目の前にも、美しい世界が現れるかもしれない。(敬称略)(文/ジャーナリスト・大西康之)
※AERA 2022年2月28日号より抜粋