AERA3月7日号から
AERA3月7日号から

 多賀さんの本にもありましたが、全く無縁だと思っていた人が突然、孤独に襲われることがある。国民の皆さんには、孤独・孤立は誰かの問題ではなく、自分の問題だと知ってほしい。

 これまでの福祉政策は、障害のある方とか、ひとり親の方など、いわゆる普通に生きている人からすると他人事だったけれど、孤独・孤立に関しては誰もが突然、当事者になります。その共鳴を醸していきたい。強そうに見られる私も孤独のスパイラルに入って、死ぬほどつらかったことがありますから。

──よければ、どんな経験をされたのか教えてください。

 いろいろありますが、郵政民営化の選挙で無所属になったときは、今まで一緒に仕事をしていた人にそっぽを向かれて。委員会に出席するために廊下を1人で歩いているとすごく寂しくて、孤独でしたね。

 それから不妊治療をしていてなかなか妊娠できなかったとき。受精卵が着床しなくて泣くわけですよ。夫と分かち合いたいけど、できない。「世の中1人きり」と思いました。私が国会議員をやっていなかったらどうなっていたかな。ぎりぎりだったと思うんです。私自身、名前が通っているから、「もし自殺したら、ざまあみろって思う人はいるだろうな」と抑止にもなりました。

同じ目線で肩を組む

──大臣は孤独とは無縁のように思っていました。

 私も忘れていたんですけど、当時はすごい痛みだったんです。大臣として、孤独な状況にある人を全員救うなんて偉そうなことは言えないけど、自分もそういう時期があったし、同じ目線で肩を組めればいいんだと考えています。

──日本では家庭の存在がだんだんと薄くなってきています。

 いまは1人世帯が圧倒しています(2020年の国勢調査では世帯人員が1人の世帯が2115万1千世帯と最多で世帯全体の38%)。1人で生きている人が多いということは、すぐに孤独の闇に入る状態の人が多くなっているということです。私は仕事で怒りやストレスを感じても、家に帰って息子がパンツを振り回していると、それだけで腹が立ってすべてが飛んで思考がそこへいくんですが、1人だと抜けようもない。

次のページ
「孤独・孤立の深い闇に陥ってしまう」