言い換えれば極めて限定的なこの2週間以外は、がん診療のみを続けてきたことになる。それにより20年の手術数は例年より100例ほど少ない4千例程度にとどまり、コロナ禍2年目の21年はほぼ平年並みの手術数を確保できている。
「減った100件の手術の内訳は、耳鼻咽喉科や泌尿器科が中心。また消化器内科のESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などは、近隣の市中病院やクリニックの受診手控えが影響したのでしょう。逆に肝胆膵外科や食道外科は例年よりも手術数が増えている。当院に手術を待てる患者はいないので、予定していた手術はすべておこないました。ICUを2週間閉じたことで運営・経営面ではダメージを受けましたが、あの厳しい局面を乗りきったという自信を、スタッフと病院がもてたことのほうが大きいですね。とはいえ、がん治療に特化した専門病院が、本来の診療対象ではない感染症を受け入れるのは決して好ましいことではなく、今後も“がん専門”の方向性を変えるつもりはありません」
(文/長田昭二)
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より