またそのためには三輪車タイプの開発が必須であろう。いまでも前1輪、後方2輪の三輪車タイプはある。それよりも前が2輪、後方が1輪タイプの低重心で倒れず転ばない、かつ視線の先に大型バケットに荷物が入っているのがわかるものが使い勝手がよさそうだ。このタイプであれば、ペットを乗車させることもできるユニット(ペットが不安でかごから飛び出さないように、透明アクリル板で中からも外が見渡せる)もつけられる。
次にメーカーに目を向けてみよう。パナソニックに自転車のイメージがわかない方も多いと思うが、バッテリーは自動車メーカーに納入、自転車は郵便配達や交番の警察官が利用していた長年の実績がある。また車と同様、自転車業界でもOEM(他社への委託生産)が進んでいる。アシスト車においては、ヤマハがバイク製造技術でモーターとバッテリーのパワーユニット(駆動部分)をブリヂストンに提供している。そのブリヂストンは自転車の製造技術で、フレームの車体をヤマハに提供している。お互いの強みを生かし共同開発している。
またヤマハは他の自転車メーカーにもパワーユニットを供給しており、そのシェア率は高く、海外でも採用されている。インドでは、アシスト車部品の合弁会社を設立した。現地でパワーユニットを製造、欧州を中心に世界で売り込む体制だ。
シマノはスポーツ自転車用の部品では、世界トップシェアを誇っている。コンポーネントとして、セット販売(変速機やブレーキなど駆動系の部品一式にした)したものだ。同様にアシスト車でも採用されている。
筆者の購入したアシスト車が充電中だったとき、商店街まで以前の自転車で向かうことにした。ところが、いままでこんなにペダルをこぐのに重たくて、力が必要なものに乗っていたのかと驚いた。アシスト車の使い勝手に慣れてしまうと、もう普通の自転車には戻れなくなってしまう。日本国内では日本製のアシスト車が、また海外では日本製の心臓部(パワーユニット)を使ったアシスト車が快走している。世界をまたにかけ、日本発のアシスト車が疾走する未来はあるか。(新山勝利)
●新山勝利(にいやま・しょうり)=講演・研修セミナー講師、マーケティング・コンサルタント、大学講師。日本商業学会、日本マーケティング学会、日本プロモーショナル・マーケティング学会・正会員。顧客満足を高める売場づくり、販売促進、店舗の活性化(ミステリー・ショッパー、マニュアル作成)のノウハウを提供する。メーカーのリテール・サポートにはじまり、全国の商工会議所など団体組織、広告代理店、卸売業、量販店、チェーン店等でコンサルティングを展開。他業界の豊富な成功事例の写真や図表を用いた、わかりやすい理論的な説明が特徴。飲食店の経営者経験もある。食べログで3.50点を達成するため、飲食店のコンサルティングでは、点数を分析したデータ主義で売上向上をはかる。また多数の専門誌に執筆。著書に『売れる商品陳列マニュアル』(日本能率協会マネジメントセンター)など。ホームページはhttp://www.ureru.jp/