驚きの光景だった。阪神・佐藤輝明内野手が12日の中日戦でスタメン起用された守備位置は三塁でも右翼でもなく、「二塁」。人生で守ったことがないポジションで起用された佐藤自身も驚いたという。10日のシートノックで二塁に挑戦すると、2日後に試合で守る「まさかの指令」が。初の守備機会だった2回に溝脇隼人のゴロを無難にさばくと、4回には1死一塁からビシエドの三ゴロで二塁ベースに入り、併殺も成功。4度の守備機会をきっちりこなした。
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他球団のスコアラーは、矢野監督の狙いをこう推測する。
「今年は3年ぶりに延長12回まで行われるので総力戦になる試合が増える。主力選手が守れる守備位置が一つでも多くあった方が不測の事態にも対応できる。佐藤が二塁を守れれば、一塁・マルテ、三塁・大山悠輔で外野に糸井嘉男を起用できるようになり、超攻撃型オーダーを組める。もちろん本職は三塁ですが、シーズンに向けたテストだと思います。佐藤はグラブさばきがやわらかいので十分に対応できる。動きがぎこちない部分もあったが、一つのオプションとして十分に計算が立ったのではないでしょうか」
一方で、スポーツ紙デスクは戸惑いの表情を浮かべる。
「2月の春季キャンプ中から用意していたならともかく、開幕まで2週間足らずのこの時期に突然二塁で練習させて、しかも試合で起用することはちょっと考えられない。しかも、佐藤は4番で守備位置も固定するべき主力選手です。三塁と二塁では同じ内野でも体の使い方が全く違う。ケガのリスクもあるので個人的には反対ですね。守備を軽視しているような戦略は優勝を目指す上で致命傷になると思います」
阪神の大きなテーマは守備力強化だろう。昨季は計86失策で4年連続12球団最多失策と不名誉な記録を更新した。青柳晃洋、秋山拓巳、伊藤将司、ガンケル、など、リーグ屈伸の先発投手陣を擁しながら、拙守が足を引っ張る試合が目立った。