IR問題を追及してきた、川嶋広稔市議(自民)はこう指摘する。

「この協定書を読むと、事業者の大阪IR社に有利な内容が多く盛り込まれていると感じる。コロナの感染拡大は世界的なもので、大阪のIR計画も当初はいくつものグループが手を挙げたが、最後は大阪IR社だけ。手を出さなかったのは当然、コロナの感染拡大で先行きが見通せないという不安要素があったから。それがコロナの状況次第で撤退も認めるような内容だ。また、土地課題対策費については、大阪市からは『790億円が上限』と説明を受けたが、それ以上の税金負担になることも考えられる」

 3月16日の参考人招致で、バウワーズ氏は、土地課題問題について「地盤沈下している可能性がある」と指摘した。

 第19条にある「本基本協定の解除」にある<開発>という項目には、

<設置運営事業の現実、運営、投資リターンに著しい悪影響を与える本件土地又はその土壌に関する事象(地盤沈下、液状化、土壌汚染、汚泥処分等の地盤条件に係る事象を含むがこれに限らない)が生じていないこと、又は生じる恐れがないこと、かつ、当該事象の存在が判明した場合には、本件土地の所有者(大阪市)は、当該事象による悪影響の発生の防止を確実とするよう設置運営事業予定者(大阪IR社)と協力し一定の適切な措置を講じること>と記されていた。

「それまでは<土地課題>として液状化、土壌汚染、地中障害物の3つしか書かれていなかったが、地盤沈下などにまで範囲を広げている」(前出の川嶋市議)

 大阪市が負担する790億円は3つに対応したもので地盤沈下などの費用は含まれていないという。

 また<投資リターン>という記述も気になる。大阪IR社の経営がうまくいかなければ、大阪市が手助けするのかとの印象も与えかねない。

 3月16日の大阪市議会で質問に立った自民党の多賀谷俊史市議はこう危惧する。 

「大阪市はこれまで市議会や、市民へのIR説明資料で、『液状化はしにくい地盤』と何年も前から説明していた。それが昨年1月に大阪IR社が調査して、大阪市に液状化するので改善をと伝えると、数か月で松井市長が790億円の税負担を決めている。大阪市が大阪IR社の言いなりになっている点が多々あります」

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税金投入が膨らむ危険