株式相場はウクライナ危機で落ち込んだが、株の魅力は株価だけではない。値動きに関係なく、確実に得られるのが株主優待。物価上昇が予測される中、家計防衛の役に立てたい。3月の権利付き最終日を前に、お得な優待銘柄を専門家に聞いた。
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「株主優待制度を廃止させていただきます」
日本たばこ産業(JT)が2月14日にこう発表すると、衝撃が広がった。同社は個人投資家の間で人気の高い優待銘柄の一つだったからだ。
株主優待制度を見直す会社が増えている。1月には食品メーカーのわらべや日洋ホールディングス(HD)と、靴専門小売りのエービーシー・マートが廃止を発表。2月は電力機器メーカーの東光高岳と食堂運営受託のシダックスが、3月も自動車部品の東プレ、証券会社のHS HDなどが廃止や見直しを発表した。株主優待は上場企業が行う株主への還元策の一つ。保有株式数など企業が決めた条件を満たす株主に対して、自社商品や金券などを贈る制度だ。銘柄選びの参考にする投資家は少なくない。
大和インベスター・リレーションズによると、全上場企業のうち、株主優待を実施する企業の割合は21年9月末時点で37.9%。前年に続いて低下した。2年連続で減るのは、リーマン・ショック直後の09~10年以来11年ぶりだ。同社営業サポートグループ長の濱口政己さんは、その理由をこう分析する。
「コロナ禍で業績が悪化し、株主還元策の見直しを迫られたことが一つ。もう一つは、4月の東証再編の影響が挙げられるでしょう。新しくできる最上位の『プライム市場』の上場維持に必要な株主数の基準が、従来の東証1部の2千人から、800人に緩和されました。その結果、個人株主を増やす必要性が弱まった可能性があります」
加えて、最近は機関投資家などから「不公平だ」という声も強くなった。
「優待でもらえる商品やサービスの中には、お金に換算しづらいものも少なくない。保有株数を増やしたからといって優待の内容が有利になるとは限らず、保有株数に比例して増える配当と、その点で違う。投資家との対話がより重視される中で、こうした声は無視できない」(濱口さん)