朝7時過ぎ、通学路の歩道に可搬式オービスが設置された。その脇の公園には近隣の小学校に通う子どもたちを連れた母親が集まってきた。
「こんなふうに、いつも取り締まりをやってくれるとありがたいんですけどねえ」と、女子生徒の母親が装置を横目で見ながら言う。
近くで子どもたちの見守り活動を行っている古石場1丁目東町会の鈴木俊雄会長は、こう話す。
「ほら、この道は見通しがいいから、車がスピードを落とさないんだよ。千葉県八街市の事故みたいなのがあっちゃ困るからさ、毎朝、この道路脇に立って、走ってくるドライバーに頭を下げているんだよ」
この通学路は、都心を結ぶ幹線道路、永代通りの抜け道として使われているという。
「制限速度は30キロなんだけれど、60キロくらいで走るわけ。昔、事故が何件かあったね」(鈴木会長)
「可搬式オービス」の効果はてきめんで、「今日はみなさん、ゆっくり走ってくれています」と、鈴木会長は口にする。
■取り締まりを運転者に認識させる
この日の取り締まりを実施したのは警視庁深川署と交通執行課。狭い道路でも運用できる「可搬式オービス」のメリットを生かしたものという。吉永英記執行第二係長は、こう説明する。
「幹線道路などで行っている通常の速度違反取り締まりは『定置式』というんですが、運用するのに速度を測る人、機械を見る人、車を止める人、違反切符を切る人と、5~6人が必要です。このような幅員の狭い道路では通常の取り締まりはできません。違反車両を止めると渋滞が起きますし、さまざまな機械を置くスペースもない。一方、『可搬式』の場合、現場では速度を測定すると同時に写真を撮るだけなので、1人で運用できる。違反した人は後から呼び出す仕組みです。可搬式のメリットを生かして、このように裏通りでも取り締まりができるわけです」
さらに、吉永係長は、こう続けた。
「このような狭い生活道路や通学路でも速度違反取り締まりを実施していることを運転者に認識させることで、交通ルールの順守と速度抑制効果が期待できます」