元宮内庁職員の山下晋司は、こう肩を落とす。

「愛子内親王殿下の評価が高まっているのは喜ばしいことです。だからといってメディアなどが『愛子天皇論』といった見出しを掲げて、国民にその可能性があるように思わせるのは、よい状態ではありません」

 悠仁さまが誕生する前に小泉内閣で、女性、女系天皇論が議論されたときは、愛子さまは幼稚園入学前あった。山下氏が続ける。 

「その時期から将来の天皇として成長されているならばともかく、悠仁親王殿下がお生まれになったことで状況は変わりました。現在も、皇室典範で皇位は男系男子と定められています。その環境で20歳まで成長されてきた愛子内親王殿下が、天皇になることはないといっていいでしょう」

 山下氏は、男系男子維持のためという視点ではない、と話す。皇室のメンバーは、生まれながらに住居や生き方が決まっており、選挙の投票権や国民健康保険の適用など一般の国民よりも制約も多い。

 仮に、20歳を過ぎたこれから皇室典範が改正されて女性天皇の即位が可能になったとする。それは、結婚も含めて人生の選択肢が変わるという話だ。

「ここまで成長された後に制度を変えて天皇になっていただく――。それは、皇室の方々は人権が制約されているとはいっても、あまりに酷な話。決して起きてはならないことです」

残る愛子さまの成年行事

 コロナ禍で皇室の行事も予定通り進まないなか、愛子さまの成年に伴う行事も遅れている。

 宮中三殿への参拝と皇居・宮殿で正装のローブ・デコルテに勲章と髪飾りのティアラなどの宝冠を身につけ、首相ら三権の長から祝賀のあいさつを受ける祝賀行事などは、滞りなく終わった。一方で、新型コロナ感染防止に配慮して、大学の授業も全てオンラインで受講するなど大変なことも多い。

 そうしたなか、誕生日の記者会見は3カ月遅れで行われた。

 そして、成年を迎えた皇族は、伊勢神宮と神武天皇陵、大正天皇の多摩陵と昭和天皇の武蔵陵等へ成年の報告を行うため参拝をする。だが、コロナ禍で先行きが見えないこともあり、まだ行われてない。

 愛子さまが成年行事に伴う神宮や天皇陵への参拝を終えていないことで、令和皇室の在り方を心配する声もある。

 伊勢と神武天皇陵は、遠方だが武蔵陵は東京。しかも、悠仁さまは、お茶の水女子大学附属中学校を卒業した翌日には八王子市に向かい、武蔵陵墓地で曽祖父母である昭和天皇と香淳皇后の陵を参拝し、中学卒業の報告をしている。

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悠仁さま、あと2年で成年に