――映画作りについての作品は本作で3本目ですね。このテーマに惹かれる理由は?
「表現方法に関心があるんだ。例えば恋愛というテーマは新しくも何もない。それでも語り方によっては面白くなる。映画作りというテーマについても同じで、いかに物語るかが要だ。ストーリーを提示するだけでなく、映画の可能性について光を当てたいんだ」
――ご自身と本作に登場する監督と似ているところは?
「自分との共通点はいくつかある。たとえば常に走っているところ。いつも緊急事態に面している気持ちに共感できる。たとえゾンビ映画でも、創造性や向上心を持って臨めるということもそうだ。疲れ果てていると、監督として抱いていた夢を見失いがちだ。これは映画監督が常に抱えている問題点だと思う。監督業が軌道に乗り危機感が薄れる一方で、ハングリーさを忘れてしまう。現実と夢のはざまにある問題だろうな」
――ワンカット撮影は大変だったのではありませんか?参考にした作品は?
「フランスではギャスパー・ノエがロングショットを得意としている。「ゼロ・グラヴィティ」(13年)はワンカット撮影のマスターピースだと思う「バードマン」(14年)のロングショットも驚くべきだ。僕自身はワンカット撮影にそれほどこだわっていないし、最高の手法だとも思っていない。ただ試してみたいとは思った。それよりも今回の最大の挑戦は、駄作というか失敗作を作る点。シーンが長すぎるとか、アクションが全くないとか。監督として、空白なシーンをつくるためにカメラを回すのは至難の業だった」
――上田慎一郎監督にはお会いになりましたか?
「会っていないんだ。カンヌ映画祭に来る予定だったんだが、奥さんの出産と重なってしまって。僕の映画を、楽しく観たと言ってもらった。とても良い反応が返ってきたので嬉しい。僕の映画は、彼のオリジナル映画に対するオマージュだ。とても良い関係が築けたと思う」
――小規模予算のオリジナル版が成功した事についてどう思われますか?
「奇跡だと思うよ。経済的な意味でだけではなく、映画の質という点でも。6日で撮影したというのだから。非常に賢い。また美しい物語だ。同じことは二度と起こらないかもね。小さい反響が何度も繰り返され大きくなっていった。口コミだけで。フランスの場合斬新な映画に対し予算を出してくれる人達もいるので、映画作りの環境の上では他の国に比べると恵まれていると感じるよ」
(高野裕子)
映画「キャメラを止めるな!」 ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場ほか全国上映中