デジタル人材という言葉は便利でみんなが使っているが、「ビッグワード(大言壮語)」と切り捨てるのは、荒瀬光宏デジタルトランスフォーメーション研究所代表。同社はデジタルテクノロジーに対応した組織の再構築などを手助けする。
「デジタル人材を募集している企業は多いが、それはデジタル企業ではない。デジタル企業はそんな人材を募集しない」(荒瀬さん)
いまや、企業や政府・自治体などの組織は「デジタルをいろいろな業務に組み込んでいかないといけない」と荒瀬さんはいう。
たとえばデジタルの部分を外部に発注すると、細かい修正や仕様変更などに臨機応変に対応できないと指摘する。
前出の秋山さんも指摘するように、昔は組織内でデジタル分野を担う人と一般業務をしている人に分かれていた。デジタル分野を担う人は下請けのように使われるだけで、業務に口を出さなかった。ところが、いまはそんな時代でなくなった。
秋山さんは「仕事をしていくうえで、より効果的に仕事をするため、デジタルの知識は不可欠。あたり前のことで、専門的な知識ととらえないほうがいい」と話す。デジタル人材は、デジタルのものをつくりだす専門家ととらえがちだが、それだけでなく、それを活用・運用して仕事を実行する人も含まれるという。
荒瀬さんによると、米国では、組織内でデジタルを担う人と、一般の業務をする人が分かれていない。しかし、日本では企業も役所も上層部にいる年配者に、理解が足りないことが少なくないという。それが「日本の競争力低下の最大の原因」と荒瀬さんはみている。
デジタルのことを理解していないと仕事ができない。組織の現場も上層部もみな同じだ。そんな時代を迎えている。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2022年5月6・13日合併号