「思っていた以上に記者さんがたくさんいるので緊張していますが、ちょっといろいろ思いを伝えたく、書面にて考えてきたので、見て読ませていただきます」
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4月11日にツイッターとインスタグラムで現役引退を表明した田中刑事は、4月29日に行われた「プリンスアイスワールド2022-2023 Brand New StoryIII 横浜公演」の初回終了後、引退会見を開いた。冒頭の言葉とともに紙を取り出して読み上げる姿には、フィギュアスケーターとしての区切りを迎える思いをきちんと伝えたいという誠実さがあった。
プリンスアイスワールドで田中と共演しており、引退会見の前に取材に応じた宇野昌磨と鍵山優真の言葉からは、温厚な先輩としての田中が浮かんでくる。
宇野は「年は先輩ですけれども、同じ目線でしゃべって下さっています」と田中の気さくな人柄について語った。
「これからも友達なのか先輩・後輩なのか、その間の関係だとは思うんですけれども、仲良くしていくと思うので、これからも、これまでも変わらないと思います」
また鍵山も「大先輩だけど楽しく話してくれて、すごく頼れる人」と話し、親しく接してきたことを振り返っている。そして、鍵山はプロスケーターとしての田中への期待を口にした。
「これからはプロになると思いますけれど、僕は刑事くんのプログラムが好きなので、たくさん見られるのがすごく楽しみです」
近年の田中は所作に円熟味が増し、ベテランならではの渋い男性像を氷上に描き出して観客を魅了していた。またアニメが大好きだという田中は、今季のショートで「シン・エヴァンゲリオン劇場版」より『Paris』を使用している。
田中のアニメ愛が炸裂したのが、『ジョジョの奇妙な冒険』の曲『ダイヤモンドは砕けない~メインテーマ~』を使ったエキシビションだ。学ランを着て主人公の東方仗助に扮した田中が、疾走感のある曲に乗り、最初から最後まで全力でリンクを駆け回る。演技後の挨拶も “ジョジョ立ち”で決めてみせるこのプログラムは、何度でも観たいと思わせてくれる、田中のこだわりが詰まった傑作だった。