イギリスの人気テレビ番組でも特集された“軍人の妻”合唱団の実話を、「フル・モンティ」のピーター・カッタネオ監督が映画化した「シング・ア・ソング!~笑顔を咲かす歌声~」。合唱団結成を主導した女性を、アカデミー賞ノミネート経験のある現代の名優クリスティン・スコット・トーマスが演じる。
2009年、愛する人を戦況が激化するアフガニスタンに送り出し、最悪の知らせが届くことを恐れながらイギリス軍基地に暮らす軍人の妻たち。大佐の妻ケイト(クリスティン・スコット・トーマス)は、何げなく始めた合唱に、彼女たちが笑顔を見せることに気づく。最初は、人前で歌えなかったり、音程を無視して歌ったりと、心も歌声もてんでバラバラ。しかし、心情を吐露するように共に歌い続けるうちに、同じ気持ちを持つ仲間として互いを認めていく。
そんな合唱団のもとに、戦没者追悼イベントへの招待状が届く。思いがけない大舞台に浮足立つ妻たちだったが、そんな彼女たちの元に舞い込んだのは、恐れていた知らせだった。
本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
戦地の兵士と彼らを家で待つ者たちの間で交わされる手紙の言葉を歌詞に使った歌が胸に沁みる。同じ時に月を見上げる約束の夫と妻。コーラスグループの活動は楽しいけれど軍人の妻や恋人というところに不安の影がさす。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★
ひとりで問題を抱え込んだ大佐の妻は買い物依存症になっている。合唱であれば、妻たちがそれぞれに自分の声を持ち、分かち合える。彼女たちが歌うと、よく知られた曲でもその歌詞に特別な思いが込められ、心を動かされる。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★★
こんな作品に出会うと本当に嬉しい。コミカルに描いているけど、お互いを思う気持ちで泣けます。不安の中で生きなければいけない奥様たち。でも同じ立場の方に刺激を与えて、まねして心の支えになる。応援します!
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★★
大衆映画の良さが十二分に横溢。この監督の「フル・モンティ」と同じく、自分の殻を破って前を向くドラマだが、日常が死と隣り合わせなのが相違点。キャラクターの描き方に工夫が凝らされていて喜怒哀楽を共有できる。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2022年5月27日号