ミッツ・マングローブ
ミッツ・マングローブ
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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「ヤクルト1000」について。

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 かつて、みのもんたさんが司会をしていた「午後は〇〇おもいッきりテレビ」で特集された食品が、その日の夕方から品薄になる現象がありました。私の祖母も「今日みのさんのテレビでやっていたから」と、納豆やグレープフルーツなどを必要以上に買い込んでいたものです。

 いわゆる「トレンドセッター」。今風に言うと「インフルエンサー」。いつの時代にも、瞬発的に世間の欲求を扇動する影響力を持つスターが存在します。その人自身のファッションや髪型や化粧方法などを世間が真似るパターン(聖子ちゃんカット・アムラー・キムタクファッションなど)がほとんどですが、前述の「みのさん」のように、その人から発信・推薦・賞賛されたものが流行るという方が、より影響力を感じさせます。

 今やインターネットやSNS上には、自称・インフルエンサー的な人たちが溢れており、絶えず何かが言葉巧みにお薦めされている世の中。ちなみに私の父親は百貨店に勤めており、母親も海外のファッションに精通していたこともあり、例えば高校時代にラルフ・ローレンが、大学時代にDKNYが流行った時にも、毎度「もうラルフは古い」とか「DKNYの次に来るのはドリス・ヴァン・ノッテンだ」などと水を差され、リアルタイムで周囲と同じ流行りものを身につけられなかった想い出があります。そうこうしている内に流行に無頓着な人間になり、元来の性格も手伝って「決まったものだけをずっと消費する」という生活スタイルが身につきました。中でも、衣食住に関しては、基本的に「新しい選択肢」は不要。単調であればあるほど落ち着きます。

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