Roger Michell(左):1956年生まれ。映画監督。「ノッティングヒルの恋人」(99年)などで知られる。2021年9月22日、本作完成後に65歳で急逝/Kevin Loader(右):1956年生まれ。プロデューサー。「ウィークエンドはパリで」(2013年)ほか10本以上のミッシェル監督作品を製作
Roger Michell(左):1956年生まれ。映画監督。「ノッティングヒルの恋人」(99年)などで知られる。2021年9月22日、本作完成後に65歳で急逝/Kevin Loader(右):1956年生まれ。プロデューサー。「ウィークエンドはパリで」(2013年)ほか10本以上のミッシェル監督作品を製作

 この出来事から英王室は国民との関係を見直すようになった、とローダー氏は推察する。

「ウィリアム王子をはじめ、若いロイヤルファミリーは国民のムードを敏感に察知し、常に国民と同じ水の中で泳いでいなければいけないと考えています。国民と同じ感覚を失わないように努力していると感じます」

 およそ100年におよぶ女王の人生を振り返ることは、そのまま世界の近代史を振り返ることでもある。英連邦王国の長として、さまざまな国や人とコミュニケートしてきた彼女は、女性活躍の先駆者でもある。

「イギリス人の誰一人として『彼女がもし男性だったら、より良い仕事ができた』と思う人はいないでしょう。使い古された言い方ではありますが、彼女は『フェミニスト・アイコン』です。女性であることが、その成功に重要な意味を持っていると私は思っています。母親的な存在や視点で、さらに人間味のある人柄で、国を率いることができたのでしょう」

 残念ながらミッシェル監督は、この映画の公開を待たずに昨年9月に急逝した。女王の人柄を身近に感じられる本作はまさに監督自身のようだ、とローダー氏は話す。

「機知に富んでいて温かく、人間味がある。そしてちょっとしたいたずら心やユーモアがあるところもロジャーそのものです。この映画は『お勉強映画』ではありません。エンターテインメントとして楽しみながら、女王について考えたり、『もしも自分が女王だったらどんな感じだろう?』と感じたりしてもらえればうれしいですね」

 映画「エリザベス 女王陛下の微笑み」は17日から全国公開。(フリーランス記者/中村千晶)

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