
長男チャールズをはじめ4人の子の母として、そして英国君主として人生の大半を過ごし、96歳の現在も現役。昨年亡くなったフィリップ殿下とのおしどり夫婦ぶりもよく知られている。
映画には公務室での雑談やインタビューに答えるおちゃめな姿、競馬場で「あの馬に賭けたのよ! 賞金がもらえる!」とはしゃぐ様子など、人となりがうかがえる映像が満載。そこから見えるのは、幼少期からスッと姿勢よく、ユーモアを忘れず、妹や周囲に気を配る「姉キャラ」な一面だ。ローダー氏も話す。
「とにかく印象的だったのは、彼女のユーモアセンスです。あまり面白みのなさそうな公務のときにも、自身のユーモアを使ってどこかに面白さを見つけようとしている様子が映像からも見てとれるのです」
特に貴重な映像は王室関係者が自ら撮ったホームムービー。BBC(英国放送協会)が撮影した宮殿内部の映像なども許可を得るのに苦労したそうだ。
■ダイアナ妃事故の教訓
英国民にとって、女王とはどんな存在なのだろうか。
「世代による違いはもちろんありますが、基本的にイギリス国民は女王に対して愛情とリスペクトを持っています。彼女は在任中に間違った行動を一度もしていない。家族に対しても公務に対しても、全く非難する余地のない生き方をしてきたからだと思います。唯一、例外があるとすると、97年にダイアナ元妃が亡くなったときです。あのときだけは女王と王室は、国民のムードを適切に把握できていなかったように感じます」
ダイアナ元妃が交通事故で死亡した際、英国ばかりか世界中に衝撃が走った。だが、王室はコメントを出さず、宮殿に弔旗も掲げなかった。この対応に英国民の怒りが沸騰した。映画には多くの人たちの献花であふれるバッキンガム宮殿の前で女王が車を降り、人々と対話するシーンが映し出される。

■活躍する女性の象徴
「あれはまったく計画されていなかった行動で、先例のないことだったそうです。さらに、この後すぐに女王は映像を通じて国民に話しかける場を持った。ロイヤルファミリーは、国民がそこまで怒りを感じていることに対してショックを受けたのではないでしょうか。そして状況を見誤ったことを自覚し、すぐに対処したのだと思います」