プーチン氏の歩み
プーチン氏の歩み

──ウクライナ侵攻の伏線になっていますか。

 そう。ウクライナが欧米化して、民主化の機運がロシアにも入ってくるのを恐れているのです。また、プーチン氏は大統領就任以来、帝政ロシアの歴史書を読んで学んできました。18世紀、ロシアはオスマントルコと戦争をくり返し、ウクライナ東部を領土に収めています。今回の戦争は、ウクライナを属国と考えているプーチン氏の歴史観に基づく戦争なのです。ですから、プーチン氏が政権の座から排除されれば戦争は終わります。

──プーチン氏に代わる後継者は現れますか。

 今後の焦点は、エリート層の動向です。キーワードは、ロシア経済を牛耳る新興財閥「オリガルヒ」と、旧ソ連のKGB(国家保安委員会)出身者を中心とする「シロビキ」です。これまではプーチン氏が怖くて進言できませんでしたが、ウクライナ紛争が膠着したことで、彼らの一部から公然とプーチン批判が出始めています。後継者は、オリガルヒとシロビキの支持を得られ、彼らに利益を差配できる愛国者。それが最大の条件になりますが、まだ不透明な状況が続くと思います。

──プーチン氏自身、KGBの工作員でした。

 KGBを希望した理由として、日本の対ソ侵略防止を目的に日米開戦前の東京で諜報活動をしていたゾルゲに憧れた、と近年になって初めて明かしています。最初は国内の治安担当職員で、レニングラードの防諜機関で働きます。レニングラードは“ヨーロッパに開かれた窓”といわれ、欧米思想が入りやすい場所でした。プーチン氏はそこで、国内の反体制派の摘発をしていた。現在、その当時の同僚たちを重用しており、安全保障会議書記で事実上のナンバー2であるパトルシェフ氏、対外情報庁(SVR)長官のナルイシキン氏、連邦保安局(FSB)長官のボルトニコフ氏らがいました。ソ連崩壊によって共産党がなくなり、現在、KGB出身者たちが政治の前面に出ています。

──ウクライナ紛争でのプーチン氏の最終的な目的は何でしょうか。

 それも場当たり的で、まったく出口戦略を示していません。やはり、ドネツク、ルガンスクの2州は絶対に制圧して、名誉ある撤退でなければ引き下がれないでしょう。

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