練習して自己流の泳ぎを体得

 ある時、息子が「これ(浮き具)がなくても泳げるようになりたい」と言い出し、夫と一緒に数日かけて練習したことがありました。

 健常の次女が泳げるようになるまでには、夫が両手をつないだ状態で前に立ち、ふし浮きとバタ足の練習から始めたのですが、息子は手をつないで浮こうとすると、身体が不安定になる怖さから脇や指先に異常な力が入り、ガチガチになってしまいます。

 いろいろと試した結果、夫が考えだしたのは、息子のおなかに夫の手を当てて支えることでした。

 脳性まひの子どもは、手足に自分の意思とは違う力が入りやすいのですが、おなか周りは比較的柔らかいのです。夫が言うには、はじめのうちは手のひらで強く支えていたのが、慣れてくると自然に浮く瞬間が出てきたそうです。息継ぎをしようと頭を上げると身体が沈みやすいのを知り、自己流に手で水をかいてバランスを取る技も体得し、息子は泳げるようになりました。

 いわゆるクロールや平泳ぎとは全く違う泳ぎ方ですが、本人は気にしていないようです。

障害児もスポーツを楽しめる

 医療的ケア児の長女が通う特別支援学校にも、プールの授業があります。

 温水なので、コロナ禍以前は6月から10月までプールに入っていました。

 首の座らない寝たきりの子どもがプールに入るというのは、はじめは想像できませんでしたが、首の下や膝の下などに、バランスを取るための特殊な浮き具を入れると、あおむけで浮くことができます。水に浮くことで身体が軽くなるのか、いつもとても気持ち良さそうにしていました。

 障害のある子どもも、少しの配慮でいろいろなスポーツを楽しむことができます。

 うまくできるか?と不安に思うよりも、まずは参加して楽しめることが大切ですね。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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