一方、15年5月、愛車ハーレーダビッドソンでツーリング中の衝突事故で九死に一生を得ている。

「右カーブのところだったから避けきれなくてさ。気がついたらガードレールの下に放り出されて救急搬送。右足のひざ下から甲にかけてのけががひどくて、36カ所もの粉砕骨折でした。それでやむなく10月に引退したんです」

 だが、プロレス界とは縁が切れず翌16年9月に悪役ユニット「魔世軍」を結成して総裁に就任。初代タイガー・マスク(佐山聡)が主宰するリアルジャパンプロレスやプロレスリングZERO1などの大会をにぎわせた。

 そして17年、7度目の引退ツアー中の大仁田厚と対戦するためリングに復帰。昨年8月15日、大阪で開催されたFMWE大阪大会の6人タッグマッチ『大仁田厚、HASEGAWA、岡田剛史VSミスターポーゴ、青柳政司、木高イサミ』にも出場し、これが青柳館長のラストマッチとなった。

 現在、誠心会館は愛知県内に10カ所、神奈川県、岡山県にそれぞれ1カ所の計12支部があり、門弟は約500人いる。

「館長はかつて、稽古ともなると竹刀を振りまわし、鉄拳制裁当たり前のスパルタスタイルでした。でも時代が変わって教え方もソフトになりましたね。特に子どもの教え方がうまく、未就学児からも『館長、館長』と慕われていたんですよ」(前出の鈴木4段)。

 プライベートでは結婚後、二女に恵まれた。

 青柳さんへの取材時、家族のことを聞くと、

「孫は2人。4年前に結婚した長女の子どもで、2歳の女の子、去年生まれた男の子です。これがまあ、可愛くて可愛くて……」

 と話し、青柳さんの頬がグッと緩んだ。

 心からご冥福をお祈りいたします。

(高鍬真之)

23歳にして誠心会館を創設した青柳政司さん。写真は30代前半のころ(本人提供)
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