バブル入社の父母が子にしがちな
時代錯誤のアドバイスとは

 子が就活に失敗する典型的な親のタイプについて、少しお話しします。今の大学生の親世代はバブル期入社の人が多いですが、今なおその感覚のままでいる人は危険だと思ってください。

 一例として、自分が働いていたときの価値観で就活について判断し、「転勤のないところにしなさい」「総合職なんて大変そうだから、一般職・事務職でいいじゃない」と言うことがあるかもしれません。ところが、そもそも今の時代に一般職や事務職という仕事の区分は、かつてと比べ少なくなりました。転勤の有無だけで本人と仕事のマッチングを判断することもできません。子のためによかれと思ってこのようなアドバイスをし、息子・娘が就職先を見つけられなかったというパターンは実際にあるのです。

 はたまた「バリキャリ」の総合職の母親や「企業戦士」として生きてきた父親が、「ワークライフバランス」を大事にする企業を志望する子に対して、「もっと上を目指しなさい」「そんなぬるい会社では成長できないぞ」と言うのも同様です。親の価値観はもう古いのに、自分が若かった時代に成長していた企業が一番だといまだに思っているのも、いただけません。

 当たり前だと思われるかもしれませんが、親が子の就活に口を出すことは、「子の可能性を広げてやりたい。そのためにどこの大学に入れるかが子への投資に他ならない」という気持ちが根底にあるからで、親にとってはその投資の仕上げが就活だからです。「有名大学に入ったからには、これくらいの企業に行ってほしい」というのが本音なのですが、それは親のエゴです。
  
 少子化で1人の子に対する教育投資額は増えました。大学生は1970年代には25%程度しかいませんでした。しかし、大学生の人口比率は昔のままではありません。現在の18歳人口はバブル期に比べて約100万人減っているにもかかわらず、大学の定員は50万人のまま変わっていないのです。そうした「水準」が変わっていることにも、親は気づくべきです。

 そのことも含めて、つまるところ、今の業界や企業の良し悪しは父親・母親には判断できないと心得ましょう。子がいろいろな業界・企業を見た結果、「この企業がいい」と思ったらそれが正解なのです。もちろん、サンプルが少ない中で選んでいるなら、22年卒で内定がない子のケースで述べたように、横のつながりだけでなく上下のつながりを意識し、その企業の関係先やその企業がつきあう企業などを手がかりに、広い視野で見据えたうえで決めるべきです。

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「多くの企業を受けろ」といっても、誰も理由を教えない