『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き 「選ばれた才能」を120%活かす方法』加藤俊徳 ダイヤモンド社
『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き 「選ばれた才能」を120%活かす方法』加藤俊徳 ダイヤモンド社
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 10人に1人の割合で存在する「左利き」。アインシュタインやエジソンといった偉人、モーツァルトやピカソといった芸術家、実業家のビル・ゲイツやオバマ元米国大統領などもそうだったことから、左利きの人に対して「天才」という印象を持っている人も多いようです。

 いっぽうで、自身が左利きだという人のなかには、ハサミやおたまなど右利き仕様の道具が使いづらいことに加え、自身の感性や考え方が周囲と違うことに疑問やコンプレックスを抱く人もいるといいます。

 実は、この違和感は当たり前のこと。なぜなら、利き手が異なると脳の使い方も変わるからです。左利きは右脳が、右利きは左脳が主に発達しており、これによって得意不得意をはじめ、思考や性格まで違ってくるのだとか。言うなれば、左利きは「多数派とは異なる個性を持つ『すごい』人たち」。

 そんな左利きの「すごさ」を、自身も左利きである脳外科医・加藤俊徳さんが、著書『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き 「選ばれた才能」を120%活かす方法』にて脳科学の見地から解説しています。

 研究によると、人間の脳は左脳が主に言語情報の処理に関わっていること、右脳が非言語である画像や空間の認識を担当していることが明らかになったそうです。つまり、何か話をするとき、左脳のネットワークだけ使えばよい右利きと違い、左利きは非言語情報を扱う右脳を主に働かせながら、同時に左脳も使って言語処理をおこなうことになります。そのため、左利きは言いたいことを言葉に置き換えて発するまでに時間がかかる傾向があり、「現代人は言葉を使ったコミュニケーションが主であるため、左利きが日常で抱く違和感にもつながっている」と加藤さんは説明します。

 けれど、左利きには左利きの得意分野もあります。子どものころから「みんなは右手でやっているけど、左手ではどうすればよいか」を常に意識してきたことで、「両手を常に気にかけている左利きは、右利きよりも知らず知らずのうちに脳を活性化させている」と加藤さん。こうした独特な脳の使い方こそが、使える脳の範囲を広げ、左利き独特の個性を生み出しているのです。

 具体例の一つが「直感」。加藤さんによると、直感とは「脳にストックしてある知識量や情報量を、自分では意識できないほどの高速で回転させて得たアウトプット」のこと。"言語以外のあらゆる情報を無意識のうちに蓄積している巨大なデータベース"が右脳であるため、右脳が発達している左利きは当然のごとく直感に優れているのだそうです。

 ほかにも左利きが秀でている能力として、「独創性」や「ワンクッション思考」が挙げられており、本書で紹介されている、直感の精度を高めるために「思い浮かんだことを言語化する」などの訓練を積み重ねれば、左利きの持つ潜在能力をさらに開花させることができるかもしれません。

 これは、左利きに限らず、右利きでも両利きでも同じこと。加藤さんは「これまで、1万人以上の脳の画像診断をしてきましたが、一人としてまったく同じ脳を持った人はいませんでした」と言います。

「自分の脳を知り、思いどおりの力を発揮できる脳づくりをしていけば、誰もが自分なりの個性を生かした豊かな人生を歩むことができるでしょう」(本書より)

 みなさんも本書で、利き手や脳にまつわる不思議さ・面白さを学んでみてはいかがでしょうか?

[文・鷺ノ宮やよい]