写真家・王露さんの作品展「Frozen are the winds of time」が9月16日から東京・目黒のコミュニケーションギャラリー ふげん社で開催される。王さんに聞いた。
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作品の邦題は「時間の風、そのまま」。
「この作品は私の故郷とお父さんの話なんです」
それは王さんが「子どものころからずっと逃げていた現実」であり、トラウマの記憶なのかもしれない。
北京から南西へ新幹線で約3時間。王さんの両親は山西省の省都、大原で暮らしている。作品は2人の生活を追ったものだが、そこに写る家の中は静寂というより、重苦しい空気が漂っている。真新しい高層マンションと周囲の景色は清潔だが、無機質で、人のにおいはあまり感じられない。
写真展会場の入り口には悲しみの言葉がとめどなくつづられた古い日記の一部が展示されている。
「お母さんが書いた遺書みたいな日記です。『自分が死んだら、お父さんや娘はどうなるのだろうか』とか、そんなことばかりが書かれていて、涙の跡がたくさんある」
■事故、借金、祖母の死
王さんの生活が突然、暗転したのは20年ほど前。12歳のときだった。
タクシー運転手だった父親が高速道路で事故を起こし、重傷を負った。一命は取り留めたものの、深刻な後遺症を患った。
「医者によると、脳が8歳の子どもみたいな状態になってしまった。それで、子どもの番組を見るようになりました。ドラマとか、大人の番組にするとすぐに怒る」
事故を起こした車は友人や親戚から借金して購入したものだった。
「そのお金を返すのは全部お母さんの責任になりました」
父親は汚い言葉を発するようになり、「友だちや親戚はあまり家に来られなくなった。ストレスがたまったお母さんはよく怒っていました」。
追い打ちをかけるように、療養中の父親と王さんの世話をしていた祖母が亡くなった。
「いろいろなことが12歳から16歳くらいの間に起こりました」
母親の日記はそのころに書かれたものという。