今回の個展は「鉄道になんら関心がない人が見ても、いいね、と思ってもらえるような写真展にしたい」と言う。
「趣味の世界で終わらせたくないんです。鉄道写真の価値をもっともっと高めて、ふつうの写真好きの人にも支持されるようにしたい。そうしないと、鉄道写真の世界は広がらない。いつも、そう思っています」
山崎さんが写真作家を志向するようになったのは、30歳を過ぎてから。
「だいぶ遅いんです。それまでは、好きで撮っていた、というレベルで。個展をやろうとか、そういう考えはこれっぽっちもなかった」
しかし、歳を重ね、仕事の幅が広がると、さまざまな分野の写真家と話す機会が増えた。それに刺激され、個展を開き、写真集をつくるようになった。
■自分の作品を撮るべきか?
もちろん、いまでも「基本的には食べるための仕事として」写している。
「電車がきれいに写っているものや、美しい風景のなかを走る列車の写真がいちばん商品価値が高くて、カレンダーやパンフレットに使われる。ただ、それは撮影テクニックや、いい季節に行けば撮れるので、それほど個性は出ないと思っています」
日本全国を訪れる一方、海外の鉄道にはあまり興味がない。
「日本にもいい風景が残っているし、ちゃんと人も撮れる。日本の味を出したり、感性が問われるのは、やっぱり、スナップ写真だと思うので、そっちでがんばりたい」
山崎さんの会社では鉄道写真のフォトライブラリーも営んでいる。
「すごくきれいな風景のなかを電車が走って来ると、『会社のためにお金になる写真を撮るか』『自分の作品を撮るべきか』、いまだに悩みますね」
(アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】山崎友也写真展「少年線」
キヤノンギャラリー S(東京・品川) 8月28日~10月11日