ほかにも子どもが写った作品がいくつもある。
「それもあって、タイトルに『少年』と入れています。でも、『少女』のほうが多いですね(笑)」
目の前を通りすぎるトロッコ列車に手を振る園児たち。小さな踏切を渡る小学生。無人駅で遊ぶ子どもたちの姿もある。
「駅をのぞきに行ったら、たまたま子どもがいた。そんなシチュエーションばかりで、子どもを写すために探す、ということはほぼないです」
写っているのはローカル線が多いのだが、近ごろの地方の足といえば車で、電車を利用する人はかなり少ない。
「人を撮るのが好きなんですけど、いま、スナップ写真を撮るのって、すごく難しいなあ、と思いますね。気の利いた感じの人がいつも駅にいるわけじゃないですから、運なんですよ。ひたすらさまよってもぜんぜん撮れないときもあれば、偶然の出会いでいい写真が撮れたりする」
ようやく人と出会え、「声をかけても、撮らせてもらえないこともある」。
「ぼくは事前、もしくは事後に、必ず許可をとる。でないと、発表できないですから。子どもの場合は親に許可を得ないとダメですし」
■夜に撮る必然性を感じる写真
雨の夜、水滴の向こうにぼやけた東京駅が写る作品もある。
映画「男はつらいよ」シリーズのロケで使われた駅舎の出入り口には小さく犬の姿が写っている。
「岡山県の山あいを走る鉄道には木造の駅舎が残っていて、情緒があるところが多いです」
昨年の豪雨災害で運休中の肥薩線(熊本県-鹿児島県)の線路には木の枝が伸び、それを夕日が照らしている。
「光をうまく使いたいと思っているので、光と影は意識しますね。あと、夜も好きな時間帯です」
フィルム時代から「夜の写真は大好きだった。でも、限界があった。感度が低くて、どうしても長時間露光に頼らざるを得なくて、光跡の写真が多かった」
デジタル時代になると、夜の撮影の可能性がすごく広がった。
「ただ、夜でないとこの色は出ないとか。夜に撮る必然性をどこかに感じる写真でないと、ダメだと思っています」
■いまの鉄道写真の殻を破りたい
写真展のタイトルは「少年線」と、やわらかいが、山崎さんが目指すのものはなかなか挑戦的だ。
山崎さんはこれまでの鉄道写真展について、「珍しい電車が写っているとか、過去の懐かしい電車の写真とか、鉄道が趣味の人しか見に来ない写真展だったんです。車両が主役の写真では、一般の人は何がいいのか、わからない」と指摘したうえで、「それを打破したい」と語る。