東京パラリンピックは9月1日、バドミントンが始まり、女子シングルス(WH1)に里見紗李奈(23)が出場する。AERA2019年5月27日号のインタビューを紹介する(肩書、年齢は当時)。
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左手小指の付け根にある1センチ大のマメ。こんもり盛りあがった白い塊は、里見紗李奈の負けず嫌いの証しだろう。
2018年、パラバドミントン国際大会のシングルスとダブルスで2冠。競技歴1年半で世界の頂点に立った。バドミントン経験があり、粘り強いラリーが持ち味だが、車いす歴の短さはハンデだ。
「落下地点は予測できるのですが、チェアワークが難しい。車いすをもっと自由自在に動かせるようになりたい」
ダッシュしては止まるストップ&ゴーの練習を繰り返す里見の手には、おしゃれなネイルアート。コートで車いすを操るとなれば、その手でタイヤごとガシッとつかむ。摩擦で手袋はすぐに破れる。特に左はボロボロになる。ラケットを持った右より左のほうが、タイヤへじかにパワーを伝えられる。左手一本が、コートでは里見の足になるのだ。
トランプで負けると勝つまで家族を巻き込むほど勝ち気な性格。半身不随になった当初は引きこもりがちになった。
「車いす姿を見られたくなかった」
しかし、パラバドミントンを始めると徐々に気にならなくなった。この1月に迎えた成人式で活躍を紹介され拍手を浴びたことで、より自分に自信を持てるようになった。
「将来の夢なんてなくてふわふわした感じで生きてたけど、パラリンピックという目標ができた。事故に遭う前の自分より、今の自分のほうが好きです」
大切な左手をぎゅっと握りしめた。
(ライター・島沢優子)
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■パラバドミントン
車いすと立位(腕など上肢の機能に関する障害がある場合)の二つのカテゴリーがあり、その中で障害の種類や程度によってクラス分けされる。車いすのシングルスなどのコートは、一般の半分の面積で行うが、そのほかのルールはほぼ健常者のものと変わらない。タイなどアジアで盛ん。東京大会から正式競技。2019年の国際大会で勝利したポイント数によって出場が決まる。
※AERA2019年5月27日号に掲載