東京パラリンピックは8月25日、車いすラグビーが始まり、1次リーグA組の日本は初戦でフランスと対戦する。AERA2021年3月1日号に掲載したエースの池透暢(41)のインタビューを紹介する。
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得点につながるアシスト、ロングパス。車いすラグビーのエース池透暢は、常に「やさしいボール」を供給する。
「一言で車いすラグビーといっても、いろんな障害の選手がいる。それぞれボールをとりやすい体勢は違います。視野を広くして相手が欲しいタイミングを第一に考えて出すようにしている」
この「相手を感じる能力」は、中学部活動でのバスケットボールとラグビーに転向する前の車いすバスケットで養った。正確に投げる力は少年野球で身につけた。マルチなスポーツ体験が生きている。
他選手よりも座面が10センチ近く高い車いすに乗る。座高の高い外国勢相手に邪魔されずパスを通すためだ。ただし、それには痛みも伴う。高い車はタックルされたら倒れやすくなり、スピードも遅くなる。遠くに車輪があるため、力を車輪に伝えられないからだ。左の車輪を押して回す前腕の骨は2度も疲労骨折。今では投げる・漕ぐをほぼ右手一本でこなすが、左右差はまったく感じられない。
19歳で遭った交通事故で全身の75%に熱傷を負った。それ以外の部位から大量に発汗するため体がつりやすい。「試合後は腕も上がらないけれど、強くなって金メダルをとりたいからやめられません」
事故のあと成人の日を迎えた病室に、振り袖やスーツ姿の仲間たち50人ほどが訪ねてくれた。事故で友人を失っており、死さえ頭をよぎるなか、勇気づけられた。
「支えてくれたみんなに金メダルを見せたい」と力を込めた。
(ライター・島沢優子)
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■車いすラグビー
障害の程度に応じて0.5~3.5点の持ち点があり、コート上の4人の合計が8.0点を超えてはいけない。ただし、女子1人につき0.5点加点され最大は10.0点。バスケットボールと同サイズのコートで、ボールをもってゴールすれば1点。相手をブロックする、ボールを運ぶなど役割が与えられる頭脳的な競技。
※AERA2021年3月1日号に掲載