前出のトランプ派グリーン議員は早速、ツイートした。
「トランプ大統領と同じように、ジョー・バイデンを扱わなかったら、ガーランドと司法省は説明責任を問われるべきだ」(呼称は原文通り)
バイデン氏は10日、訪問先のメキシコで文書発見について、こう答えた。
「機密の文書や情報は、重要と受け止めている。文書がそのオフィスに持ち込まれたことに驚いた。文書に何が含まれているのかは、分からない。調査には全面協力している」
実は、文書の存在が報道されるまで、バイデン政権は安定感をみせていた。下院で共和党が多数派となる直前の年末、約1兆7千億ドル(約225兆円)の23年度予算に署名。その前の中間選挙では、「赤い波(赤は共和党の党色)」が起きると民主党の劣勢が予想された中、大健闘した。選挙でダメージを抑え込んだバイデン民主党内では、24年大統領選挙で「バイデン再選」を求める声が強まっていた。
■対立はさらに険悪に
中間選挙で大勝し再選されたカリフォルニア州知事、ギャビン・ニューサム氏は55歳と若く、一気に24年大統領選への出馬が期待された。しかし、米ワシントン・マンスリーは年末、バイデン氏が出馬するのであれば、ニューサム氏は出馬をしないと伝えている。80歳のバイデン氏に勝ち目があるという強い「待望論」の表れだ。
一方、共和党でも、トランプ氏がすでに出馬表明をしている。また、フロリダ州知事選で大勝したロン・デサンティス氏も出馬への準備を進めている。従来、民主党と共和党の票が二分する激戦州という同州で、大勝したことで追い風が吹いた。
民主党はバイデン氏の出馬表明待ちの一方、共和党は、トランプ氏かデサンティス氏か、と24年を見据える形で年が明けた。ところがわずか10日で、共和党は分裂を見せつけ、バイデン氏の身辺にも影が差した。
CNNは、トランプ氏の文書問題とバイデン氏の文書発見は異なると説明する。トランプ氏には捜査令状が出されたのに対し、バイデン氏の弁護士らは公文書記録管理局に翌日返却したと、「違法性」のなさを主張する。しかし、特別な調査が双方になされることで、民主・共和の対立がさらに険悪になりそうだ。
トランプ時代以来、リベラルの民主党と、保守の共和党の二つの政治的イデオロギーが激突する「分断」が問題になってきた。しかし、議会の混乱で、共和党内での分断が浮き彫りになった。民主党内も例外ではなく、急進派が勢いをつけている。二つの分断ではなく、四つの分断の時代に突入している。その中で、来年の大統領選への胎動が始まる。
(ジャーナリスト・津山恵子(ニューヨーク))
※AERA 2023年1月23日号