オリンピックスタジアム前にそびえる「壁」。意外と高い(撮影/岡本直也)
オリンピックスタジアム前にそびえる「壁」。意外と高い(撮影/岡本直也)

 品川区からきたという50代の夫婦は「ミーハーだから、会場を見に来るのを楽しみにしていたけど、思ったよりも人が全然少ないですね。コロナのせいで仕方ないけど、もう少し賑やかなのかなと思っていたので、少しがっかり。午前中も、中で競技をやっていたのだろうけど、音が何も聞こえてこなかった。なんか寂しいね。あと、壁が多すぎて、ちょっと圧迫感が…。もう少し近づきたかったな」と話す。

 オリンピックスタジアムの目の前にある人気ラーメン店「ホープ軒」のスタッフにも話を聞いてみた。

「今日から陸上もスタートするということだったので、売上などをかなり期待していたんですが…正直、人は多くないですね。開会式の時は、かなり繁盛したのに、残念です。次は閉会式の時に期待するしかないですね」

 予想よりも閑散とした空気感に、戸惑った人はかなり多かった印象だ。それに「やはり、もう少し会場を近くでみたい」という意見も多かった。

 案の定、東京メトロ「外苑前」駅のほうからであれば、もう少し近づけるのではないかと考えた人もかなりいた。人の流れに沿って、ついていってみたが、やはり、こちらも、明治神宮球場を少し超えたあたりで、バリケードが出現。途中からは関係者しか入れなくなった。落胆の声は、あちこちで聞こえた。

「JAPAN SPORT OLYMPIC SQUARE」内にあるモニュメント。ここだけは長蛇の列が!(撮影/岡本直也)
「JAPAN SPORT OLYMPIC SQUARE」内にあるモニュメント。ここだけは長蛇の列が!(撮影/岡本直也)

 ただ、この五輪開催中、テレビで一度は見た人も多いであろう、五輪モニュメントは人気だ。「JAPAN SPORT OLYMPIC SQUARE」内にあるモニュメント。ここまでの道中、正直、人が賑わっているスポットはなかったが、ここだけは違った。長蛇の列を作って、みな、記念写真を撮っている。

 板橋区から来たという家族連れは、「子どもがどうしてもモニュメントと写真が撮りたいというので来た。40分ほど並びましたね。でも、一生の思い出になります」と喜んでいた。元気な声で叫びながら、写真を撮る男性4人組は「人が予想よりも少なかったので、写真は撮りやすかったと思う。これ以上、列が長かったら、写真は諦めていましたね」。

 この日は東日本で不安定な天気。夕方にはゲリラ豪雨に見舞われた。にもかかわらず、記念撮影の列があまり崩れなかったのには驚きだ。

豪雨がきても、記念写真の列は崩れなかった(撮影/岡本直也)
豪雨がきても、記念写真の列は崩れなかった(撮影/岡本直也)

 1人で訪れていた50代の男性は、「コロナが蔓延しなければ、今日は会場で陸上をみていたはずなんです。そう考えると、なんだか悔しくて…。気がついたら、今日はここに来ていましたね」と笑みを見せた。

 開催中にオリンピックスタジアムを目に焼き付けたい人も多いはずだ。だが、「不要不急」といわれればそれまでのこと。密を避ける必要もあるし、なかなか思い通りにはいかなもどかしさもある。距離こそあるが、選手たちに応援の声を届けたい。(文/AERAdot. 編集部・岡本直也)

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