大坂なおみは全仏オープン1回戦で勝利した後、コート上でインタビューを受けた。しかし、その後の記者会見は出席を拒否した(gettyimages)
大坂なおみは全仏オープン1回戦で勝利した後、コート上でインタビューを受けた。しかし、その後の記者会見は出席を拒否した(gettyimages)
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 大坂なおみが記者会見を拒否した上、「長い間のうつ」だとして全仏オープンを棄権した。彼女は何に苦しんできたのか。AERA 2021年6月14日号で、テニスを長年取材してきた記者が読み解いた。

【チャート】ひと目でわかる大坂なおみの4大大会成績

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 大坂なおみ(23)が全仏オープンの記者会見拒否を宣言し、棄権を決めたときの「告白」は衝撃的だった。

 4大大会初優勝の2018年全米オープン以降、「長い間、うつの症状に悩まされ」「メディアの前で話すときは大きな不安に襲われる」と明かした。

 きっかけになったのは、この日だったかもしれない。

 19年2月19日、ドバイ。世界ランキング1位での初の大会に挑み、初戦で世界67位の選手に完敗した。その1週間前、サーシャ・バインコーチ(36)との契約解消を唐突にツイッターで発表した。メディアの関心は師弟の離別一色。「金銭面でもめた」といった悪意ある臆測報道もなされた。

■今まで最も傷ついた

 失意の敗戦後、大坂は「今まで耳にしたことで最も傷ついたことの一つ」と漏らした。涙をぬぐい、「なんで自分が泣いているのかわからない」と続けた。

 4大大会に限らず、テニスのプロツアーではメディアが希望すれば、勝ち負けを問わず、選手は試合後の会見に臨む義務がある。拒否すれば罰金が待つ。4日間トータルで順位が決まるゴルフと違い、試合ごとに勝者と敗者が冷徹に分かれる。チームスポーツのように失意の傷をなめあえる仲間もいない。スターになるほど、負けたときは敗因を根掘り葉掘り聞かれる。大坂はその年のウィンブルドン選手権でも1回戦で負け、泣いて記者会見を打ち切った。

 それは、2年前までの話だ。

 世界がコロナ禍に覆われた昨年5月、米ミネソタ州で黒人男性が白人警官に首を押さえつけられ、息絶える事件が起きた。「自分の身に起こったことでないからといって、何も起こっていないわけではない」。ハイチ出身の父と日本人の母との間に生まれ、褐色の肌をもつ彼女は「黒人の命も大切だ(BLM)」運動の旗手となった。

 8月には黒人男性が警官に銃で撃たれた事件を受け、出場中の大会からの棄権を示唆した。全米オープンでは、警官らの暴力で命を落とした黒人の名を記した黒いマスクを1試合ごとに着けた。2年ぶりの優勝で用意した7枚すべて披露した。以前の心のもろさは消えたように見えた。

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不思議だった会見拒否