芸能人は誹謗(ひぼう)中傷で訴訟を起こすこともありますが、政治家はほとんどそんなことはしません。むしろ、それに耐えてこそが政治家だろうという空気さえあります。どんどん政治に関する不信感は募り、挙げ句の果てに起きたのが今回の事件だと私は感じました。
近年の政治の不満を「全て安倍が悪い!」という論調も一部では巻き起こっており、自分たちの鬱屈とした気持ちを安倍元首相一人に負わせるような風潮さえもありました。
安倍元首相を撃った男は一人ですが、そこまでの空気を作った責任の一端は、マスコミやネット、反安倍で沸く人々にもあるのではないでしょうか。政策の不満、政治の不安、そういうものを言論の場ではなく、暴力で訴えるのはあまりにも卑劣です。
一度、体調を崩して総理大臣を退いた安倍元首相は、2度目のチャレンジで返り咲き、長きにわたり日本の発展に貢献されてきました。自身の姿と重ねていたのか「再チャレンジできる社会」をとなえていらっしゃいました。私はこの数年、その意味をかみ締めながら、安倍元首相の姿に勇気をいただきながら、ここで終わるわけにはいかないと、前を向いて生きてきました。最期に安倍元首相は何を感じていらっしゃったのだろう。日本の未来をどのように憂えていたのだろう。またお話しする機会があるならば、ゆっくりと伺いたかったです。
ご冥福をお祈りいたします。
(元衆議院議員 宮崎謙介)