「(アベノミクスは)大きな成果を上げてきたとはいえ、まだまだ道半ばで今後もそのリーダーシップを必要としていただけに、誠に残念でなりません。残された我々が改めて一層の努力を重ねていくことこそが、安倍元首相の遺志に報いることになると信じています」
2011年3月の東日本大震災直後から勉強会を重ねてきた前衆院議員の山本幸三氏は、本誌にそうコメントを寄せた。
安倍晋三元首相が手がけた経済対策「アベノミクス」は、企業が悩んでいた円高に歯止めをかけ、株価や景気の好転につながったと評価する声は少なくない。ただし、物価が持続的に下落するデフレからの完全脱却や、持続的な成長にはなお課題も残る。「道半ば」での今回の事件は、日本経済にも尾を引きそうだ。
第2次安倍晋三政権の経済ブレーンとして、元首相の経済対策「アベノミクス」を支えた元内閣官房参与の本田悦朗氏は、安倍氏について「デフレの怖さを誰よりも理解し、その克服に向けて対策に踏み切った稀有な政治家。今も道半ばとはいえ、デフレの克服に向けて突破口を開き、一定の道筋をつけた。日本経済にとっては、恩人です」と話す。
安倍氏は12年12月に発足した第2次安倍政権で、(1)大胆な金融政策、(2)機動的な財政政策、(3)民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」を打ち出した。それまで続いてきた円高の流れは止まり、株価は上昇。リーマン・ショックや東日本大震災で低迷していた企業の景況感は上向き、その後、雇用も増えた。
第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏もこう言う。
「安倍氏の最大の功績は、世界標準のマクロ経済安定化策を日本に初めて導入したことです」
日本はバブル崩壊後、「失われた30年」と呼ばれるほど長く経済が低迷した。株価や地価は上がらず、個人消費も伸び悩む。企業も、モノやサービスが売れずに、投資や輸出に慎重になる。企業の収益は増えずに、給料も頭打ちだ。その結果、さらに消費が縮む悪循環に陥る。前出の本田氏は言う。