広島大学の学長と副学長による中国故事の解説書。「朋有り遠方より来たる」から、「天網恢恢、疎にして失わず」「病膏肓に入る」などまで、孔子・孟子を始めとする諸子百家の遺した言葉を31点紹介しつつ、漢文学者である佐藤副学長と、外科医である越智学長の、専攻領域をまたぐ対談が、解説に彩りと奥行きを添える。
現代社会にもなお有効性を発揮する故事の数々が、外科医としての経験に照らして、あるいは組織の長としての心得に引き寄せて語られる。コロナ禍も見据えた汎用性のある考察が、すぐに役立つ故事の深遠な含意をあぶり出している。
「待ちぼうけ」の歌の元ネタ、「助長」の本来の意味、「虎の威を借る狐」の逸話の意外な深さなど、膝を打ちたくなる知識の宝庫でもあるこの本を読んで、今こそ必要な「温故知新」のスピリットを養いたい。(平山瑞穂)
※週刊朝日 2021年4月2日号