先住民族とされたアイヌだが、他国の先住民族の法的地位とはどのように異なるのか。落合准教授は「アイヌの立場が憲法上、不明確である」点を指摘する。

 例えば米国は先住民を部族単位で扱い、自主性を持たせる。「憲法に連邦政府との通商の対象と記されており、国や州と同様に位置付けられています」。連邦政府が部族ごとに保留地を定め、域内では各部族がある程度の主権を持ち、自治を行っているという。

 対して原住民を個人で捉えているのが台湾だという。「日本統治時代の戸籍に原住民かどうかが記載されており、それを基に原住民を認定しています」。憲法には「原住民族」という身分が明記されており、政府は、原住民である個人を中心に支援を行っている。

 米国の先住民も同化が進んだのは事実だが、アイヌほどではない、と落合准教授は話す。「先住民は保留地への強制移住などに苦しみましたが、入植者とは集団として区別されたことで独自性やアイデンティティーを比較的維持できました」。一方、アイヌは明治政府により国民に統合され、生活領域も開拓の対象とされたため、集団としてのまとまりを喪失。和人と同化せざるを得なかった。

 集団としての把握が難しいならば、台湾のように個人への施策を行うことも考えられるが「戸籍にはアイヌであるかを記載する書式はなく、和風に改名されたアイヌもいるため、誰がアイヌかを判別するのは困難です」。さらに憲法の「法の下の平等」のため、対象をアイヌに限った支援が直ちには難しいと指摘する。

 では、アイヌ施策推進法の支援はどのようなものか。「市町村が、住民からの提案を受けて政府に交付金を申請し、アイヌ文化環境などの整備・向上施策を行います。支援対象はアイヌに限られませんが、アイヌからの提案が重要です」。その上で「アイヌの要望は世代や地域により多様。それらの具体的ニーズに応じた実効的な政策の実施が求められます」と話す。

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