2万株のちんげん菜から髪1本
印象的だったのは、障害の特性をメリットとして捉え、職場に生かしていることでした。
たとえば、知的障害がある、ある従業員の場合、対人のコミュニケーションは難しいものの、2万株のちんげん菜の中から1本の髪の毛(異物)を発見できる才能があること、軽度の知的障害を伴う肢体不自由の方は誰かが付きっきりでなくても働けるので、機械を開発し、プラスチックのトレーを入れて洗浄する係を任せられること、知的障害のある方の丁寧な掃除により、ビニールハウスの害虫が激減し無農薬が実現したこと……。
壁を取るのは健常者の気持ち次第
一般的に障害者雇用は経営にマイナスと捉えられている場合が多いのが現状です。それではなぜこの農園では障害者雇用をし続けるのでしょうか。障害者が働ける職場づくりは、高齢者や女性が働きやすくなることでもあります。働く場をユニバーサルデザインしようという取り組みのおかげで、今では老若男女100人が働く組織に発展。それに伴い業績も上がったそうです。
発想の転換がプラスに働くこともあるのですね。
この方が最後におっしゃった「結局、壁を取るのは健常者の気持ち次第なんです」という言葉が、とても響きました。
障害者に触れる機会が必要
この発想は障害のある子どもたちの就園や就学にも共通することだと思います。
受け入れる側がリスクを考えて躊躇(ちゅうちょ)してしまう現状も理解できます。
足が不自由な我が家の息子も、幼稚園や小学校に入るまでにはさまざまなやりとりが必要でした。
でも実際に入園・入学してみると、どの学年でも先生や仲間に恵まれ、中3になった現在まで大きなトラブルなく登校しています。特に幼稚園時期の小さな子どもは偏見が無いので、一度納得すれば、障害を「そういうもの」として受け入れてくれるのだと実感しました。
障害に対する柔軟な考え方は、実際に障害者に触れてみないと分かりません。こういった機会があらゆる場面で増えていくことが、共生社会の理解につながる一番の近道のように思います。
※AERAオンライン限定記事