11年前の正月、子どもたちがお年玉で子猫を買ってきた。目が合ったから、誕生日がお母さんと同じだったから──そんな理由で。
生後2カ月のメインクーンの雄。胸元の真白い長毛を見て、なんて品のある猫でしょうと、子どもたちは名前をすでに「ダヤン」と決めていた。有名な絵本からとったらしい。
しかし、子どもたちはなんだかんだと忙しくなり、結局、以前飼っていた犬と同様、私が世話をするはめになった。
ダヤンと呼ぶのもなんとなくこっぱずかしく、「ニャン」とか「ニャー」と声をかけると、超立派なしっぽを申し訳程度にパタパタ振るだけである。
インターホンには異常に反応し、なぜかすぐに走っていく。
おかげでドアを開けた拍子にジャンプして外へ飛び出してしまったこともある。
そのまま姿が見えなくなり、子どもたちが捜したが見つからない。家の周りでは茶色と黒の2匹の野良猫が縄張り争いをしており、心配した。
とりあえずドアを10センチくらい開け、貼り紙でもしようかと相談していると、2、3時間後に戻ってきた。
相当怖い思いをしたのか、それ以降はドアを開けても、たたきのところでグルグル回るだけで躊躇している。
のど元や耳をもみもみするのは許してくれるのだが、抱っこや、背中やしっぽを触られるのを嫌がるというのは、猫の立場としていかがなものか。
猫とは抱っこされ、なでなでされてグルグル言うものなのではないか?
私が何かと気をかけているのに、ダヤンは付かず離れずで、今日も窓から野鳥や時々やってくる野良猫をながめている。
(大坪正さん/東京都/72歳/無職)
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