漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「鎌倉殿の13人」(NHK総合 日曜20:00~ほか)をウォッチした。
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命の終わりはもう近い。おのれが息絶える夢を見た頼朝(大泉洋)は、死への恐怖にさいなまれる。
異母弟の僧・全成(新納慎也)が、ほぼ口から出まかせで告げた死へのフラグ。それを頼朝はことごとく回収していく。
忌むべき平家の赤を思わせる鬼灯(ほおずき)は部屋にあふれ、命を吸い取るという赤子(孫)を抱くはめになる。
旧知の乳母・比企尼(草笛光子)は、まるで永遠のお別れのような顔で無言のまま頼朝をみつめるが、実はただ目を開けたまま居眠りしていたというオチなのだ。
頼朝が方違えを試みれば引き返すはめになり、うっかり食べたモチはのどに詰まる。だいたい三谷幸喜脚本は不穏な未来の直前に、至極明るいコントを繰り広げる。
そのほのぼのする笑いはまるで、私たちが慣れ親しんだ日曜夕方のアレ。お魚くわえたドラ猫を追いかけてハダシで駆けていく陽気な北条政子(小池栄子)ですよ。
サイフを忘れた政子のシーンは無いけれど、北条家はまさに磯野家だ。鎌倉殿(頼朝)=マスオという婿殿を柱に、急速に勢力を増す一家。
ドラマの主人公はカツオこと北条義時(小栗旬)。その姉はのちに尼将軍と呼ばれる政子=サザエ。妹の実衣(宮澤エマ)=ワカメも、頼朝の弟・全成に嫁ぎ、フグ田家=源氏との絆を盤石にする磯野家、いや北条家。
三谷が描く大河ドラマには、いつも「家族」の視点がある。「新選組!」自体がひとつのファミリーであり、「真田丸」は父と兄弟の物語でもあった。
まさにホームコメディーのような温かい家族のほがらかエピソードは、いずれも大きな歴史の闇にのみこまれていく。
そう、私たちはすでに歴史を知っているのだ。気のいい父親・北条時政(坂東彌十郎)=波平と、けっこうな策略家であるその妻・りく(宮沢りえ)=フネの運命も。飾り気のない性格の妹・実衣=ワカメの行く末も。